各専修課程紹介

グローバル・ガバナンス専修課程

Global Governance Studies


グローバル・ガバナンス ── 持続可能な世界に向けた21世紀のアプローチ。

「グローバル・ガバナンス」とは、国際機関、国家、地方自治体、企業、NGO、個人などさまざまな主体間の協力によって、紛争、開発、環境、人権、国際テロ、感染症などの地球社会が直面する共通の諸問題を解決し、地球社会の維持存続を図ってゆく、地球規模での統治・管理・運営のプロセスを指します。
 従来の国際問題は基本的に主権国家を単位とする政府どうしの関係の中で処理されてきました。しかし、現代世界の諸問題は、もはや伝統的な国家間関係には還元できない広がりと複雑さを持つようになっています。
 そこでグローバルな視点から世界全体のガバナンスを構想し、行動することが重要になっているのです。こうした複雑な世界を読み解く方法と知識を、データ分析や社会科学の学問的基盤に立って身につけ、国内外を問わず社会のさまざまなレベルでグローバル・ガバナンスに貢献できるようになること ── これがグローバル・ガバナンス専修課程の教育理念です。

教育の特色とカリキュラム

グローバル社会で活躍するために必要な4つの力、「論理的思考力」「普遍的な学問知識」「データ収集・分析力」「英語力」を身につけるための授業を提供します。グローバルな問題を社会科学的な観点から捉える授業、世界標準の教科書や教材の使用、グローバル社会に関するデータを定性・定量的に分析する手法を学ぶ授業、英語文献の使用や英語による授業を通じて、4つの力を強化します。
 専攻は2つに分かれていますが、両者は密接な連携関係にあり、教育プログラムも一体化しています。まずは、入門科目を通して、グローバル・ガバナンスに関する基礎知識の土台を作ります。その上で、より専門的な講義(概論や特論)や演習を通して、体系的な知識を主体的に獲得、探求し、さらに実習・研究法の授業を通して、それらの知識を各自の関心テーマに応用する力を養います。こうして培われた能力により、自らの問題意識に基づく学術的な卒業論文を完成させることになります。

専攻紹介

アナーキーなグローバル社会における秩序を考える

 「国内」社会における安全の保障は基本的に政府が担っています。しかし相互に独立した主権国家から構成される国際社会には、各国の上位に君臨し全世界の安全を保障してくれるような世界政府は存在していません。このアナーキー(無政府)の中に如何に秩序を作るのか。それを研究するのが国際関係論の中心課題です。
 21世紀の現代では、国家による防衛政策や国家間の同盟に加え、国際機関や国際法の発展、経済のグローバル化の進展、NGOのようなグローバル市民社会による活動など、世界に平和と安全をもたらす条件や方法は複雑化しています。本専攻では、これらの条件や方法を多様な観点から理解するために、国際政治学、国際政治経済学、国際関係論におけるデータ分析の専門家が教育・研究を行っています。複雑な世界のガバナンス構造を学際的に俯瞰し、分析する能力を獲得するのが本専攻のねらいです。

■ 開講中の授業・演習ピックアップ

国際政治学概論 ◎ 草野大希 教授

国際政治理論からダイナミックに変動する国際政治を見てみよう。
 本授業の目標は、第一次世界大戦後に発展した国際政治学の主要理論や学説を体系的に学習し、理論的な観点から国際政治の現実を捉えられるようになることです。国際政治理論を知らないふつうの人々は、実際に起きている具体的な出来事から国際政治を知ろうとしますが、国際政治の理論家は、さまざまな理論を用いて現実の国際政治にアプローチします。理論を使うと、具体的な出来事を表面的に見ているだけでは分からないような、一般的な法則性や因果関係、あるいはロジックの働きを見出すことができるからです。なぜ、平和主義の日本は近年、防衛費を増額するようになったのか。なぜ、経済的に繋がっていた米中の関係は近年、悪化するようになったのか。リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムといったさまざまな理論から、国際政治を読み解く力を養います。

その他の開講中の授業・演習ピックアップ

アメリカ政治経済論

冨田晃正

WWⅡ以降、リベラル国際秩序の形成、進展を掲げて世界の自由貿易や民主主義を牽引してきたアメリカに生じた変化を、その国内事情に注目することで考察しています。

国際関係データ分析入門

藤田泰昌

データ分析をきちんと使えば、国際関係に関する主張は格段に説得力を増します。実践を交えつつ、データ分析の基本を学びます。

国際政治経済学演習

冨田晃正

この演習では、国際政治経済学の理論や分析枠組みを学んだ後に、それを実際に、どのように論文の執筆に発展させていくかを学んでいます。

国際関係データ分析法Ⅱ(定量的分析法)

藤田泰昌

定量的なデータ分析で国際関係を論じる方法を学びます。仮説の設定、統計ソフトで分析、分析結果の報告という流れを実践します。

政策志向と学際性から貧困問題にアプローチする

 国際開発学とは、途上国の経済・社会・政治等の問題がなぜ形成され、どのように対処すべきなのかを学ぶ総合的な学問分野です。開発途上国の貧困・開発問題という具体的問題の「解決」には、どうしたらよいのかという「政策指向」を強く持ち、幅広い学問分野からアプローチする「学際性」が必要になります。
 国際開発論専攻では、主に経済学や社会学、政治学といったディシプリンに基づいた教育・研究をしています。日々の教室での学びに加えて、アジア、アフリカ、中東などの開発途上国現場でのインターンシップや現地調査といった活動から学ぶことも推奨しています。経済成長、貿易問題、貧困削減、市民社会、環境問題、ジェンダー、ガバナンス、民主化、援助といった分野・イシューについて、社会科学的分析をする能力の構築が本専攻のねらいです。

■ 開講中の授業・演習ピックアップ

国際協力論演習 ◎ 東 智美 准教授

ローカルな視点からグローバルな開発問題の本質を理解する。
 国際協力論演習では、「開発」の現場に生きる人びとはどのように暮らし、開発事業によってどのような影響を受けているのか、国レベルやグローバルな国際協力や開発援助を取り巻く政策や構造にはどのような課題があるのかを、学生主体で学んでいきます。これまで毎年交互に海外と日本国内におけるフィールドワーク実習を実施しており、2026年度は国内でのフィールドワークを行う予定です。前半の演習では、開発問題を分析するための理論的な枠組みを習得できるよう、課題文献の講読とそれを受けた学生同士のディスカッションを行います。後半は、文献講読や専門家によるオンライン講義などを通じて、フィールドワークの対象地域の人びとの暮らしや開発課題についての知識を得た上で、リサーチ・クエスチョンや仮説を立て、フィールドワークに臨みます。実施後は、海外の開発問題との共通点・相違点を分析しながら、成果を研究論文にまとめます。社会調査の理論を学んだ上で、自ら調査計画を立て、現地で想定外の現実に直面して新たな知見を得る、というプロセスを通じて、国際協力や社会開発についての研究手法を修得し、開発問題を多角的に捉える思考力を身につけることができるでしょう。

2023年度はラオスでフィールドワーク実習を実施し、農村調査、支援団体や政府機関への聞き取りを行いました。演習では、ラオスの開発問題に関わる文献を読んだり、専門家によるオンライン講義を受けたりした上で、チームごとに教育問題と国際労働移動をテーマに調査計画を立案しました。

その他の開講中の授業・演習ピックアップ

国際開発政策論

近藤久洋

開発・援助政策を分野別に理解するため、講義・ディスカッション・ディベートを通じてよりアクティブに学びます。

開発と政治

近藤久洋

開発途上国のガバナンスが貧困問題にどのように関連しているかについて学びます。

Development Economics

サムレト ソワンルン

経済学の観点から発展途上国が直面している貧困や教育などの開発上の諸問題を分析し、解決策を考察します。

Principles of Economics:Learning and Practicing

サムレト ソワンルン

計量経済学の基礎的な理論を学びながら、実際のデータを用いて経済および開発の問題を分析するためのスキルを習得します。

グローバル市民社会論

東 智美

主に東南アジアという「地域」に注目して、グローバリゼーションが地域社会(ローカルな社会)にもたらす社会・経済的影響と市民社会の役割と課題を、その地域に暮らす人々の視点に寄り添って考察します。

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