各専修課程紹介
ヨーロッパ・アメリカ文化専修課程
European and American Studies
ヨーロッパとアメリカの文化と社会を多角的に考える。
現代では、国境を超えた人や事物、情報の往来が当然のこととなっています。この傾向は、グローバリズムに対する批判や反感が強まる中でも変わることなく続いていくでしょう。このような状況の中で、多様な異文化への理解はいよいよその重要性を増しています。
さまざまな異文化圏の中でも、ヨーロッパとアメリカは近現代の日本にとって多くのモデルを提供してきました。ヨーロッパ・アメリカ文化専修課程では、キリスト教や啓蒙思想などの「地域を越えた欧米文化の基盤」、「それぞれの国や地域の独自性・多様性」そして「国や地域同士の交流のありよう」を文学や芸術などの潮流や作品、特定の社会現象やそこから読み取れる価値観や感性などを例に具体的に学んでいきます。
そして、欧米の文化や社会についての知識を今の私たちが直面する問題とつなげていくことが、本専修課程の教育がめざすところです。
教育の特色とカリキュラム
ヨーロッパ文化専攻においては文学や文化・芸術、アメリカ研究専攻においては歴史や社会、そしてマテリアル・カルチャー ── 具体的な重点はやや異なりますが、欧米世界の特質を多様な角度から照らし出したいという関心は共通です。
また、ヨーロッパやアメリカについて学ぶ際には、外国語の学習が欠かせません。本専修課程ではネイティヴ・スピーカーによる各国語の会話や作文の授業や、欧米の文化や社会についての講義や演習を用意して、外国語によるコミュニケーション能力の向上を図ります。その際は、言葉の中に刻みこまれている文化や価値観も大切にしながら教育に取り組んでいます。
それぞれの歴史と文化のあらましを学ぶ入門講義から始まり、バラエティ豊かな授業を通じてさまざまな角度と距離からこの地域の魅力を伝えます。さらに演習形式の授業は、特定のテーマについて主体的に考える力や、意見を発信する力を養う機会になっています。
専攻紹介
豊かな文化と変化する社会を通して世界のいまを考える
それぞれの地域が歴史と伝統に根ざした多様性を保ちながら、EUに見られるような「民族や国境を越えた統合の試み」を続け、グローバル化する世界において独自の文化像を模索するヨーロッパは、近代的なナショナリズムを生み、文化における国や言語圏の独自性を重視する地域でもあります。このような矛盾をはらみつつも、ダイナミックな変化を見せるヨーロッパの姿には、日本のあり方を考えるうえでも多くのヒントが隠されています。
本専攻ではイギリスとドイツを専門とする専任教員を中心に、フランス、イタリア、ロシアなども視野に入れて、ヨーロッパ文化の光と影にさまざまな角度からアプローチしていきます。言語、文学、思想、絵画、彫刻、建築、生活、政治など多彩な主題に関する授業が開かれています。
■ 開講中の授業・演習ピックアップ
ヨーロッパ研究入門 ◎ 髙畑悠介 准教授
「西洋の没落」の時代に、ヨーロッパ近代の価値観の「普遍性」を改めて検討する。
欧米諸国がかつて誇った存在感を大きく減じつつある近年においても、欧米的なるものの核を成すヨーロッパ起源の諸々の思想や制度が ── 中でも、ヨーロッパ近代が社会機構から神を葬りながら生み出した、自由主義、民主主義、理性主義、人権思想、社会契約といった啓蒙主義的諸理念が ── 我々の社会や思考のあり方に決定的な影響を与え続けていることは明らかです。そのような近代主義的≒啓蒙主義的な思考の枠組みを相対化することの重要性と困難性の双方を深く探究する本講義は、日本人とヨーロッパ近代との関係性という大問題をも考察しつつ、究極的には、人間社会の根源的な問題─例えば「世俗的な道徳は原理上成立し得るのか」といった問題─について、自分の頭と自分の言葉で考える力を深めることを目指します。
その他の開講中の授業・演習ピックアップ
British Studies
ミルン アラン
英国を形成する四つの地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の多様性をテーマにしています。
イギリス文学史B
髙畑悠介
ディケンズ以降のイギリス文学の歴史を、代表的作品の立ち入った解説を交えつつ、小説を中心に概観します。
ヨーロッパ研究入門
松原良輔
ヨーロッパの自然、社会、政治、文化など各領域について基本的知識と考え方を、音楽や絵画、詩などを素材に学びます。
文化と価値観の衝突に自由のいまを考える
「多からなる一」をモットーとするアメリカは、経済や軍事の「超大国」であるばかりでなく、人種、ジェンダー、セクシュアリティ、環境問題、グローバリゼーション、エンターテインメントなどに関する最先端の実践や思考が行われる場でもあります。アメリカ研究は、歴史学、文学、文化研究など多くの学問の方法に則り、こうしたアメリカの理解に努める学問分野です。
アメリカ研究専攻が目指すのは、英語の情報を咀嚼・発信する能力の涵養だけではありません。アメリカで展開されるダイナミックな思考を、現地で使われている文献や資料をもとに検討し、われわれの暮らしに応用できる能力の習得も目標とします。文化や歴史などに関するあらゆる科目の履修を通じて、公正さと差別が共存するアメリカを相対的に観察・分析し、加速するグローバル化、多文化化、AI技術の進化のなかで生きるための知的胆力を身につけます。
■ 開講中の授業・演習ピックアップ
アメリカ史概論Ⅱ B ◎ 宮田伊知郎 教授
アメリカの大学で使われているテキストを用い、アメリカ史学の理論と実践の基本を学ぶ。
歴史学が試みるのは、過去に何があったのかを史料に基づき正しく描き出そうとすることです。しかし、それは簡単なことではありません。新聞記事、統計データやテレビ番組、SNSの書き込みなど、史料は無数にありますし、分析方法は技術や学問の発展によって変わり続けます。そればかりか、何をもって「正しい」とするかも文脈によって異なります。こうしたなか、歴史学者は、適切な史料を選び、適切な方法に則ってストーリーを書き出さなければなりません。では、南北戦争後から現在までのアメリカ史のストーリーは、これまでどのような史料また分析方法を用い書かれてきたのでしょうか。そこにはいかなる変化があったのでしょうか。本授業では、米国の大学で実際に使われているテキストを使い、南北戦争以降のアメリカ史がどのように書かれてきたのかを学びます。
その他の開講中の授業・演習ピックアップ
アメリカ研究入門B
宮田伊知郎
自由と平等をめぐる矛盾の連続に着目しつつ、建国期からトランプ政権までのアメリカ史を概観し、アメリカの社会や文化に対する理解を深めます。
アメリカの社会と文化演習Ⅳ
野村奈央
アメリカのキルトに関する文献購読や作品の分析などを通じて、「モノ」を研究対象とするマテリアル・カルチャー研究の基本を学びます。

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